絶対に体験したくないと思わせる、刑務所生活のリアリティ。
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暁に祈れ(2017)
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昔、タンザニアのアリューシャという町を旅しているとき、警察署の前を通りかかった。
そこで風景を撮影していたら、警察署の建物が映り込んでしまったのを警察官がとがめて、詰め寄ってきた。
すぐに画像を消したが聞き入れられず、こちらを怒鳴り、集まってきた数十人の野次馬たちが、警察の号令で私を羽交い絞めにした。野次馬の男たちは興奮していて、私に向かって大声で叫んでいる。
どさくさに一眼レフカメラを盗られないように抵抗したが、大勢から押さえつけられて身動きがとれない。全力で抵抗しているのに全く身動きができないことに、恐怖を感じた。
この映画は、その時の恐怖を思い出させる。
イギリス人のボクサーの自伝を映画化したのがこの「暁に祈れ」だ。
タイでボクサーとして再起をかける主人公だが、勝ち負けを繰り返し、ドラッグに溺れそれが原因で刑務所に入れられる。このタイの刑務所の様子が、とてもリアリティがある。
タトゥーだらけの、いかにも悪そうなやつら(それもそのはず、元囚人たちを起用している)が、主人公をめぐってタイ語でやりとりをする。タイ語がまったく訳されないから、もし目の前で自分を殺す相談をしていても、対策のしようがない。まるで目隠しをされているような恐怖。さらに刑務所の劣悪な環境は、絶対にはまりたくないシチュエーションであり、観るものを圧迫する。
タイのリアルに、目が離せない作品。
タイでは観光客でも薬物で捕まると容赦なく刑務所にいれられる。バンコクの安宿にいると、軽い気持ちで薬物に手を出し終身刑となった日本人に、差入れや話し相手をしに刑務所へ行ってくれないかと、話を持ち掛けられることがあった。
実際に、薬物でタイの刑務所に入っている外国人はいるのだ。
この映画を観たら、タイの刑務所に入るということがどれだけ恐ろしいことかがわかると思う。タイという国がもつ怪しさ、出演者たちの迫力、そして主演俳優の演技力。
映画の楽しみがひと時の別世界を楽しむことであれば、最悪の環境にどっぷり漬かり、ラストまで目が離せなくなるこの映画は、傑作ともいえる。
\ この場所に行ってみたい!/
暁に祈れ(2017)の作品情報
Runtime116分
Genre犯罪アクション
Directed byジャン=ステファーヌ・ソヴェール
Castジョー・コール 、 ポンチャノック・マーブグラン 、 ヴィタヤ・パンスリンガム 、 ソムラック・カムシン 、 パンヤ・イムアンパイ 、 ビリー・ムーア[原作]
(C)2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS
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