海外一人旅の経験者なら共感できる、不安と恐怖の連続な映画。
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サバイバル・ラン -逆行-(2015)
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旅はときどき、不安を伴うものだ。
目隠しをして歩く不安を想像してほしい。
視力を奪われてしまい、手掛かりになるものは雑多な音、ほのかな匂い、突然触れた物の手触りなど。それで状況を判断し、前へ進んでいく。
そんな目隠し歩きは、ほとんど言葉の通じない異文化のなかを旅する不安に似ている。
異国での様々な事柄の、その正体を推理しながら、見当をつけて旅を進めるのだ。
映画の舞台はラオスの南部のリゾート地ということだから、フォーサウザンドアイランズあたりだと思われる。
ラオスの南にあるほどよい秘境で(ほどよい秘境ってなんだろう)、世界から旅人達が集まって大きくなった集落である。
近代的なリゾートビルはなく、おんぼろのバンガローが川沿いに立ち並び、そこで濁ったカフェオレみたいな河を眺めながら、何もせずにボッーっと過ごす。
フォーサウザンドアイランズは怠惰な旅人の楽園のような場所だ。
NGOの医師である主人公は、休暇中に出向いたサフォーサウザンドアイランズ(らしき)土地で、誤って人を殺してしまう。殺人はとても非日常な出来事だが、この映画のような環境では妙にリアリティがある。
休暇に浮かれた欧米旅行者のふるまいや、それを目当てに商売をする現地の人々、むせ返るような熱帯の空気感と植物たち。
快楽や日頃の自制からの解放のような、人間の環境では、些細なきっかけから殺人が起こることも、妙に説得力がある。
欧米系の旅人は、自分達の文化を旅行先にも持ちこむことが多い。どんな場所であろうと、自国と同じような環境をつくってそこで楽しむのだ。
なんでわざわざ遠い場所まできてそんなことをと呆れることもあるが、彼らにとって事項と同じ環境は「安全に」楽しむための庭なのである。
そして人を殺してしまい、独力で逃げなければいけなくなった主人公は、それまで欧米系の旅行者が作っていた慣れ親しんだ文化コミュニティの外へ出る。
逃亡劇のなかで主人公は、罪人として、そして異邦人としての二重の心細さを味わうことになる。
この映画のリアリティを増している原因は、現地語を一切翻訳していないこと。実際、ラオスの田舎の人々は英語だってほとんど話さない。外国語ならフランス語のほうがまだ通じる。
しぐさや表情でも、異文化だと相手の感情が読み取れない、相手の言葉がわからないと妄想はふくらんでいく。そんな中での逃亡は、まさに目隠しで前へ進むようなものなのである。
そしてラストシーン。
彼の決断をみて、自分ならどうするかという問いは、人間性というものを深く考えることとなる。
この映画は、旅好きには覚えのある不安がたくさんあり、スリル溢れる映画となっていてお勧めだ。
ちなみにラオスは、首都ビエンチャンよりも田舎の方が素朴で楽しく、そして現地の人たちはみんな親切でしたよ。
\ この場所に行ってみたい!/
サバイバル・ラン -逆行-(2015)の作品情報
Runtime000分
Genreジャンル
Directed by ジェイミー・M・ダグ
Castロッシフ・サザーランド 、 サラ・ボッツフォード 、 ドゥアンマニー・ソリパン 、 ヴィタヤ・パンスリンガム
(C) 2015 APOCALYPSE LAOS PRODUCTIONS LTD.
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